電力に関する一考察 (Twitterにちまちま書いたがまとめたみた) 年頭に2012年から数年の東北電力供給について考えてみる。 現実的に女川原発を運転するには時間がかかるから,当面,既存設備+αだ。秋田火力にガスタービン33万KWが7月から稼働予定だし,台風損害の水力発電設備の早期復旧をして,夏の需要に備える。来年以降も綱渡り的な運用は続きそうだ。 原発を停止しておくと電気代のアップはやむを得ない状況となり,仮設住宅を含む家庭用電力料金値上げは必至だ。原発だとなぜ安いのかをどうこう考えても仕方ない。LNG価格は福島危機以来高値安定だが,これも落ち着くだろう。天然ガス関係の発電が当面は主流になるが当たり前の結論である。 問題は天然ガスや水力発電での緊急運用をどうするか。脱原発だと歴史が戻るようなことになる。いくら高効率コンバインドサイクル発電といってもそれは従来技術であり必ずCO2は発生する。太陽光,地熱,風力など自然エネルギーはエネルギー密度が低くマスエネルギー源にはならない。 今政治というよりも行政的にやらないといけないのは,太陽光や燃料電池と言った個人向けエネルギー源は別として,マスエネルギーとせいぜい数十戸数百戸までの地域エネルギーの区分けの推進とそのための電力料金体制の根本的見直しである。すなわち電力会社寡占体制の抜本的改革だ。 メガソーラー発電で供給できる電力は自治会単位の200~500戸程度であり,マスエネルギーではない。東北には温泉が多いがその温泉のエネルギーや地熱もまた活用可能だが,それも地域エネルギー。風力には音の問題があるがこれも地域エネルギーということになると違うし,岩手葛巻は実際そう。 こうして見てくると結論は既に出ているのかも知れぬ。すなわち,マスエネルギーは1機30万KW程度の従来型コンバインドサイクル発電。太陽光,燃料電池,地熱,風力等は最大1~2万KWの個人を含む地域エネルギーとして使用。後者は地方自治体か組合形式での運用で中央から金銭的補助が必須。 津波被災地のどこかに電力特区を設けて,こうした地域エネルギーシステムの実用のための実験研究をする必要があろう。復興住宅に太陽電池パネルを載せるのがベストかどうかもここで実験する。同様にLPG(LNGではない)を原料とする地域エネルギー用SOFCの実証実験も喫緊の課題だ。 技術的問題とは別に太陽光発電は一次的には直流なので蓄電システムが通常付随する。直流電力を集電し蓄電池に溜める手法も地域という単位だともっと効率的なことが可能だろう。燃料電池も一時電力は直流なので共通の蓄電システムが使用可能だ。それも含めたシステムが必要だ。 LPG燃料電池について。エネファームはついにSOFC型になって,より高効率となった。LPGも使用可能だ。震災のときにLPGはそれが家庭用燃料に使えるので非常に便利なのだ。電気に変換しないでそのまま燃料として調理をすることができるからだ。エネルギーストックとして便利。 燃料電池に天然ガスを使うとそのストックは容易ではない。水素はもっと大変だ。先に述べたように燃料電池もマスエネルギーとしては使えない。地域型だ。するとストック可能な燃料源でないと非常時に意味を持たない。ガスが来ないと使えないのではマス電気に代替にはならないからだ。 震災復旧,復興を念頭に置いて,まず地域エネルギーシステムの構築が急務である。これまでと同じマスエネルギーを土台にした街づくりは意味がない。災い転じて福となすためには,家庭におけるエネルギー3大消費の,電力,燃料,自動車を総合的に考慮に入れてシステム化すべき。 続いてマスエネルギーだ。昨年の世界石油会議では産油国の多くが天然ガス輸出に焦点を当てた。あのイランですら,であり,地下空洞には天然ガスがいやほど溜まっている。UAEやカタールは逆にこれしかないくらいだが,クウェート,バーレーンなどもLNGを最重要テーマとした。 こうした全世界的なPost Fukushimaの動きは全てLNGに集中している。自分で言っておきながら,本当にコンバインドサイクル発電は従来技術なのか。東北電力は三菱重工とともにSOFCを前段に入れた熱効率70%超のトリプルコンバインドサイクル発電システムを開発中だ。 以上,正月2日。エネルギーでは特に電力に絞って話をしてみた。政治的行政的は部分は正直技術屋としては不明な部分が多いが,電力に関する限り,入る側と出る側ははっきりしている。問題は運用や税金,補助など政治的,行政的部分だ。こいつは俺らではよく分からない。誰か何とかしてくれ。 蛇足。12月の世界石油会議。産油国はほぼすべての国のエネルギー経済関係大臣が,ロシア中国なども大臣。欧米も政府関係者が参加した。が!経済産業省関係どころかエネルギー庁関係の閣僚や次官級の参加がないのは,大消費国なのに日本だけ。大丈夫?日本は?と質問されても答える権利は俺にはない。 皆さんのご意見はご質問はいかに? |
年頭にあたり,ポスト福島(Post Fukushima)のエネルギーについて考えよう。 まずは,天然ガスコンバインドサイクル発電についてちょっと書いてみる。 JX日鉱日石エネルギー仙台製油所(仙台市宮城野区)そばの,東北電力新仙台火力発電所はその燃料の重油を仙台製油所から,天然ガスは東北電力と石油資源開発が出資してできた,東北天然ガス http://www.tng-gas.co.jp/top.html から供給を受け,火力発電してきた。 この10月,震災とは関係なく2号機(汽力発電)を廃止し,コンバインドサイクル発電機(49万KW×2,2機で女川原発の2,3号機並み)を平成29年までに設置する計画だ。 http://www.tohoku-epco.co.jp/news/normal/1183594_1049.html この天然ガスコンバインドサイクル発電は,ガスタービンと蒸気タービン(後者は圧力別に高圧,中圧,低圧に分けて発電機を回す場合が多い)の両方を使って発電機を回すことから高効率発電が可能となる。 東北電力東新潟火力発電所の4号系列はガスタービンの圧力を高めてさらに効率化を目指した1450℃のガスタービンと,低圧,中圧,高圧の蒸気タービンを組み合わせた発電機であり,国内最高の発電効率55%を達成している。 仙台火力発電所の4号機はすでに昨年稼働した,1,400℃級高効率コンバインドサイクル発電方式の発電機で,震災後懸命な復旧工事の結果,12/20に再稼働した。ただし,1機44.6万kW程度であり,出力電力量としてはそれほど大きくない。 そこで,新仙台火力発電所に大きな高効率コンバインドサイクル発電方式の発電機を導入させるわけだ。 http://www.tohoku-epco.co.jp/news/normal/1183631_1049.html で発表したようにいよいよ建設に着手した。効率は59%を目指す。また,それまで新潟にみあったLNG基地を新仙台火力発電所にも併設するようだ。 この天然ガスは上述したように東北天然ガスから得ている。東北天然ガスは新潟から仙台まで高圧パイプラインを敷設しており,仙台市ガス局にも販売しており,今回の震災で仙台市ガスが当初見込みより相当に早く復旧できたのも,このパイプラインがあってのことだった。従来電力会社とガス会社は競争関係にあると言われるが仙台はそうではない。 また東北天然ガスは,石油資源開発の関連会社,日本海LNG http://www.nihonkai-lng.co.jp/index.html から天然ガスの供給を受けてガスの配給をしている。 日本海LNGの新潟基地は,日本のLNG輸入国(1位から順にマレーシア,オーストリア,インドネシア,カタールなど)全てから運ばれてくるLNGを受け入れている大きな基地であり,ここから安定した供給が受けられるわけだが,緊急時を想定したLNG基地を仙台に置くことは頼りになる。 さて,石油産業で関係のない感じのJX日鉱日石エネルギー仙台製油所であるが,燃料電池エネファーム http://www.noe.jx-group.co.jp/lande/product/fuelcell/ を仙台市ガス局とともに販売している。この10月からはSOFC型(固体酸化物形燃料電池)販売開始しており,定格発電効率も47%に向上した。思わず脱線したが,いずれもこの燃料電池についても書いてみたい。 以上,東北電力をめぐる,非原発系発電の動きとしてコンバインドサイクル発電に注目してみたが,最後にコンバインドサイクル発電機の欠点を書いてみよう。建設費が付属設備も含めて500億円くらいになるとか,5年くらいかかるとか問題はありそうだが,最大の問題点はメンテナンスだ。発電機が大きくなればなるほど大変ではあるが,メンテナンスが良ければ長時間運転は可能だ。ただ,高温高圧という過酷な条件下,システムが複雑なコンバインドサイクル発電機は他の単純な汽力発電機と比べてメンテナンスには時間と費用がかかることも事実だ。費用面については発電効率がそれをカバーするので無視できるが,時間についてはそうでもない。今目いっぱい働いている東新潟火力3号,4号系列のコンバインドサイクル発電機の定期点検がやってくる前に何とかしたいところだ。 |