パネルディスカッション

地域のスポーツ文化を語る
丸山富雄(仙台大学教授)
川淵三郎(Jリーグチェアマン)
浅野史郎(宮城県知事/仙台Jリーグ推進協議会会長)
竹鼻純(コーディネーター・宮城テレビ放送)

要旨

記録者=村松淳司


司会
学校スポーツの限界が見えている。一つの学校でチームが編成できなくなっている。ラグビーも15人集まらない。一方で企業スポーツもたちゆかなくなってきている。
日本のスポーツは底辺から頂点まで危機的状況だと言える。今後どうするか。スポーツを文化ととらえて、地域に根ざす必要がある。Jリーグはその試みといえる。
国体、ワールドカップを抱えた宮城は、それがどこまでつながるかどうか、が、問題だろう。必ずしも繋がらないのではないか。

丸山
10分程度で問題点を話す。レジメ。
1.スポーツ文化とは
・個人の幸福(自己実現と自己表現:豊かな経験、充実感、達成感、感動など)と社会の発展(健康で活力ある社会、社交・親睦と地域づくり)両者に寄与
・文化的な質の向上:コンサマトリー(自己目的的)な価値の実現、エゴイズムとセクショナリズムの排除、自立的発展
スポーツ文化:学校の名誉のため、企業のため、お金のため、社会的名声のため、そのためだけにあるわけではない。みんなとスポーツの楽しみを共有することが必要。
2.今、なぜ「地域なのか」
・コンサマトリー(自己目的的)な価値実現の受け皿は、
 「地域」⇔機能集団(学校・企業)
・地域活性化やまちづくりといった大半の自治体の持つ「政策課題」
・学校運動部、企業スポーツの衰退
楽しみのためのスポーツは、第三の空間でやる(第一は家庭、第二は学校企業)。地域では身分やなにかから解放されたところ。企業はスポーツチームを抱えるメリットがなくなり衰退している。
3.地域スポーツの活性化に向けて
・「総合型地域スポーツクラブ」:ライフスタイル型、自主・自発・自立、開放型、公共性
・個別性と地域性:上意下達式ではない、地域の生活過大との関連および「まちづくり」の視点
・付加価値創造(競技思考から社交・親睦思考へ)
大会行事型から自分の生活に密着したスポーツへ。
4.Jリーグへの提案(個人的感想)
・選手:真のプロフェショナルをめざして
 (モデルとなりうる倫理観、行動、身なり)
・ファン・サポーター:質の高い応援
・クラブ:公共性と地域密着型の運営、グローバリズムとローかリズムの調整、質の高いサービス、付加価値をもったクラブ運営
選手は公人であることを意識せよ。派手なパフォーマンスは必要ではないのでは。ファンサポーターはどなり続けるが、もっと質の高い応援はできないのか。クラブはもっとこだわったチーム作りをしていく必要がある。


浅野
昭和62年走り始めて14年間。走るのを選んだのは、エアロビクス(有酸素運動)。手軽にできる。出張にも靴をもっていって走っている。一人でもできる。金がかからない。ランニングコスト0。
チームでやると足を引っ張るから。知事の趣味で走っている、というと良い趣味。で、やせました。
年2回ほど喧嘩します。頭に来るから、走る。
自分に負担をかけて前向きにする。友人ができる。サンディマラソンクラブSMCができる。西公園に集まって走っている。コミュニケーションができる。
ハーフマラソン。折り返し前にがんばれといわれると、答えるが、折り返したあと、声がかかると、お前やってみろ、とか思う。
危機管理でも走るのはいい。県庁に一番につく。ゴルフのあの人よりもまし。
スポーツでは目標を置くのが必要。今年は1時間53分。53は年令。
去年は達成できなかった。今年は痔の手術もあって達成不可能か。痔まで情報公開する。
自分なりの目標を設定する。


司会
日本人のスポーツ実施率はわずか30%。ドイツは60%。
少子高年齢化の中で文部科学省は50%に上げたいと言っている。いろんなアイディアも出している。

川淵
学校、企業のスポーツとか、企業中心の考え方がある。社会の帰属意識である。一方、企業がチームを持つ意味が薄れてきている。オーナーが好きな会社はokだが、それ以外はリストラの対象となってしまう。日産のゴーン氏。かなりリストラをおこなったが、野球やサッカーなどリストラの対象とはならなかった。スポーツの意味を知っている。
企業はスポーツをサポートする時代に入っている。
ある幼稚園。最近の園児の足跡を見ると、5本指がつかない。遊ばせないから、運動機能が発達しない。
筑波大の学生にも前頭葉の退化が見られるという。
幼稚園児の1日の歩数は、昔は15,000歩程度だったら、最近は10,000歩ちょっと。外にでなくなったこと。加えて、きれい好き。そういう子供達のために、学校に芝生のグランドが必要。
土のグランドは泥になるので、やりたがらない。こどもが行きたくなるような場所として芝生のグランドが必要。
印旛村(千葉)に芝生のグランドの学校がある。きっけかは廊下がほこりだらけになるから。校長が芝生のグランドを作りたいといったら、父兄から猛反対にあった。
でも、維持費はかからないし、芝生のもつフィーリング効果で、今は歓迎しているという。
子供達の育て方はJリーグの提案のようにやってほしい。
日本のスポーツはこのままでは危ない。底辺の広がりが必要。
スポーツが苦痛というのは誤り。楽しいんだという原点に返ることが必要。
短期的にものを考えない方がいい。
丸山
現状認識しよう。
企業はどういう形でスポーツを支援するのか。メセナとかそういうものか。
一学校一社で協賛金をつり上げるというやり方は、本当に支援したい企業を切っている。
町内会の運動会にも支援できるような体制が必要。
学校。いろんなスポーツでお先真っ暗。
ラグビー。宮城県では一校勝ち。15校しか予選に参加しない。育英がダントツで勝って花園に行く。これはおかしい。足下がおかしくなっている。
司会
子供数が減っているなかで日本のスポーツに対して県体協の立場でどうか
浅野
簡単な解決策は思いつかない。裾野を広げることは必要。スポーツは楽しく、エキサイティングで、チャレンジングなものだ。
危機的? オリンピックで勝てないから?
勝つために、というのも変。
裾野を広げていけば、結果的にそうではなくなる、というのが筋。
スポーツは楽しい、生きていることと同じ。
障害を持った方、特に知的障害者、スポーツに参加することができなかった。スポーツ障害者が楽しんでスポーツをやるような環境が必要。指導者は技術的な面だけでなく、障害者への理解も必要。
環境を作る努力が必要で、これは行政とは限らない。
障害者スポーツとして、宮城県では第1回全国障害者スポーツ大会が行われる。
司会
スポーツ復興計画では、生涯スポーツ社会の実現やオリンピックの話があるが、提言の中の総合型スポーツクラブとはなにか。
川淵
総合型とは2つ以上のものか。
アルゼンチン、レバプレート。スタジアム、バレーコートなどいろいろある。男の子が生まれると父が会員証を渡す。南米は欧州の人がやってきてボート、レガッタからスタートしてサッカーチームになったケースが多い。
バルセロナ。サッカーの収益をクラブに還元。一流のクラブがなくても地域の人が集まってきている。ボーリングもやっている。
フットサル。子供達でリーグ戦をやる。コミュニティで共通の話題ができる。いろんな年代の人とのつきあいをする。日本では行われていない。
コミュニティの中のゆめ。ボーリングでもフットサルでもいい。指導者がたくさん必要。ボランティアでやる。県や市が補填する。
そこに行けば、スポーツを楽しくできる。指導してくれる指導者がいる。
ところが日本にはいない。

司会
たくさんの指導者、クラブハウスなどの施設が必要ということ。
川淵
空いている学校をクラブハウスにするとか。
小さいときから地域社会に溶け込んでいる。スポーツ大好き。芝生のあるグランドが必要。
スポーツするとこんなに得する、とか。
丸山
ドイツの事例は日本ではすぐにできない。
今までの地域のスポーツはどうだったか。ママさんバレーなどせいぜい15年、一代で終わっている。そのままのメンバーが年をとるからだ。全種目、全部門型、異なる世代でやっていく総合型スポーツクラブが必要。
小学校や中学校から総合施設へと、段階的に進めていく必要がある。
司会
クラブハウス。町内会の関係が希薄だから、スポーツでわいわいやるのが必要。クラブハウスが地域の核となる。どのような設備が必要か。
川淵
クラブハウスは汗を流すために、シャワーは絶対に必要。
丸山
クラブハウスは閉鎖的では絶対だめ。管理が厳しいと誰も使わない。コミュニティセンターがそうだ。
浅野
SMCのクラブハウスは源吾茶屋。ロッカールームの代わり。汗は流せない。
学校使うというのは面白い。日本で地域スポーツが根付かないのは、企業社会だから。日本人のとって生きることとは何かに関係する。
お父ちゃんは、寝るために帰ってくる。課内旅行、送別会。会社とかの組織に縛られている。
こういうところで文化が育つか。
お父ちゃんと息子との関係も希薄。一つの案としてサマータイムを実施したらどうか。早く帰って夕方スポーツができる。
地域が活動するときにお父ちゃんがいないときに、どうやってやるか。お父ちゃんが変化しないといけない。
川淵
父親の姿が見えることが必要。1チーム15名というところもある。そのため父兄がグランド整備などいろいろやる。夕方子供達が練習していると、ネクタイ姿のお父さんが見ている。これがお母さんだと、がみがみ?他人の子供まで注意したりして。
浅野
野村監督の奥さん?
川淵
クラブは経理をきちっとできることも必要。地域ではぐくむべき。Jリーグの100年構想はそれ。
浅野
宮城県とデラウェア州は姉妹州。向こうの知事もジョーカー。
向こうに行ったとき、夜のパーティに1時間遅くくるという。いいよ、といったが、理由は息子のリトルリーグの試合があるから、という。勝った勝ったと喜んでいた。
これが逆だとどうだろう。息子の試合で抜けることができるか。
宮城県にきたとき、走りながらしゃべった。
我が家にきたとき、トイレにいった。
州知事でさえ、息子のリトルリーグで休むのだ。
丸山
日本の社会もそうなりたい。是非スポーツしてほしい。暇だからごろ寝しないように人々の意識の改革も必要。選手という言葉も変。選手がやればいいんだという子供の頃からの社会教育の失敗。
今までのスポーツの指導の仕方が問題。
司会
地域でやっているのは、野球とかバレーとか。日本でお金を出してスポーツをやる人はいない。
川淵
企業市民という立場で、企業がバックアップするのは大変。いかに地域社会に寄付したか、出しやすいバックグランドがあるかどうか。
地域に対する支援、いろんな工夫仕方がある。ユニフォームをあげるとか。やる側の工夫によって引き出せる。日本の中で不足している地域のスポーツクラブをつくるとすれば、住民がお金を集める、自分で払うことが必要。
司会
財政の確保。
川淵
半田市ナナラスポーツクラブ。中学校の体育館を使ってどんどんやっている。運営を任せらられるようになった。中心になってやっているしっかりした日がいる。熱心な人があちこちにでてくる必要がある。運営はそう容易ではない。
司会
たくさんの指導者、クラブハウス、財政、地域住民がやっていくとが必要。最後に一言ずつ。
浅野
ベガルタ仙台の応援。一人の子供が全試合に応援に行ったという。もちろん親も一緒であろう。
そういう子供達がベガルタ仙台を支援している。ベガルタ仙台を核にしていろんなスポーツの活動ができる。外国では寄付が集まる。寄付控除が日本にはない。これを意識的につくっていかないと無理。スポーツと文化は生きている意味そのもの。税金を使うべきもの。
あ、帰ってすぐに子供とあそばなくちゃ。
川淵
ベガルタ仙台がいかに一体感を与えるか。応援しようとするものがある限り、それによる一体感。
子供達が選手の背中をみている。人間形成という意味で信頼感が必要不可欠であるという態度でやってほしい。
丸山
総合型スポーツクラブ。うちの町で必要かどうか、チェックする。必要性がないところでは生まれない。その地域、地域の課題がある。企業市民が何が必要なのかをよく話し合うこと。