平成15年12月17日
50,000人対応の輸送計画(案)
村松淳司
1.SMAPコンサートでの問題点
(1)仙台駅シャトルバスの破綻
最も深刻なのは「仙台駅シャトルバス」の破綻である。コンサート観客の1万人以上が利用した、仙台駅シャトルバス。なぜこれが破綻したのか、まず考えねばならない。
破綻の前兆はすでに往路で起こっていた。仙台駅東口のTBCハウジングセンター付近の路上に設けられたバス乗り場から延びた観客の列はなんと、西口ペデストリアンデッキまで達した。バース数を次第に増やして対応するが、増える観客にバス乗車が律速になった。結果、15:00すぎに最長となった。その長さ、約500m。このときのバース数は最大8であった。今考えればこのときの情報をそのままスタジアムからの乗車に適応できればよかったのだ。
(2)乗客は最大どのくらい待ったか
コンサート終了が21:50。最後の仙台駅シャトルバス乗車が23:50。2時間待ったのである。これは忍耐の限界を超えている。しかも雨の中待っていたのだ。余談ではあるが、サブトラックでの放送や各ボランティアからの情報提供はある程度の意味はあったかもしれないが、待機列の絶望的な長さ(最大800m)の前には無力だっただろう。
11,000人が2時間待ったと言うことは、バース数10として、1人あたり7秒程度もかかっていることとなる。通常は3〜5秒だ。一人4秒なら1時間ちょっとでさばけたはずなのである。
(3)他のシャトルバスはどうだったか
多賀城、泉中央ともにベガルタ戦よりもつらい状況だったが、利用人数が少ないこともあって仙台シャトルバスほど大変ではなかった。一方、利府シャトルバスはバース数が少ないことが欠点となったのかあまり上手にさばけなかった。
(4)SMAPコンサートとベガルタ戦の違いは何か
@訪れる人が全国で地理に不案内で宮城スタジアムを知らない人が多いこと
A客層は女性が多く、公共交通で訪れる人が多いこと
B自家用車で来る人も道がよくわからない人が多いこと
(5)問題点は何か
@多賀城駅、泉中央駅、そして仙台駅シャトルバスが沢乙口一つに集中したこと
→ 沢乙口処理能力の限界を示唆
A1人あたりのバス乗車時間がかかり過ぎたこと(7秒は遅すぎる)
→ バース設置方法の改善が必要
B沢乙口でのバス退出方法が徹底せず、バスが渋滞したこと
→ 警備員によるバス誘導方法の徹底が必要
C遅すぎた終了時刻 これについては後述
2.仙台駅シャトルバスの位置づけ
仙台駅シャトルバスの意義は何か、というと、本来のシャトルの意味合いとして最も重要な路線であるということである。ビッグスワンが新潟駅から1本、ビッグアイは大分駅から1本、ということと同等なのである。宮城県の玄関駅からの1つの交通手段で来られるビッグスタジアム、という位置づけで、かつ、運行時刻は 気軽に行ける時間、最大でも30分を目指すべきであろうし、それは可能であった。実際、ベガルタ戦ではそのような時間で運行できている。
3.宮城スタジアム21:30の鍵
仙台は車社会だが、それでも仙台近郊20km圏内は近郊電車が走って通勤通学に便利な立地になっている。仙台駅を中心にすると、東は仙石線と東北線が、西は仙山線、北は地下鉄、南は東北線常磐線と、JRと仙台市営地下鉄がその役目を担っている。それらの終電車発車時刻は仙台駅をいずれも23:55頃。宮城スタジアムの仙台駅シャトルバスの運行時間はスムーズに行けば30分だが、混み合うと45分程度を考えないといけない。スタジアムの最も遠い席からシャトルバス乗り場までの距離は約2km、余裕を見て30分。仙台駅での乗換時間は10分。すると合計85分を考慮に入れないと終電車に間に合うためにスタジアムを後にできない。23:55から85分をひくと、22:30。シャトルバスに全員が乗車可能な時間はどんなに少なく見積もっても1時間は必要だ。とすると、当然21:30が最終時刻となる。
利府駅での通常時の最終電車22:30頃であること、多賀城駅の石巻行最終電車が23:10であることなどを考慮すると、22:30までには全観客が帰宅の途に着いていなければならず、それはやはり21:30が限度ということになる。
今回の21:50は体育館を含めても未経験の時間帯であり、5万人という規模がその数字を深刻にさせたものと思われる。
4.周辺住民との関係
宮城スタジアムを含むグランディ・21のコンサート等の使用については、おおよそ21:00までというのが紳士協定のはずである。最大延長しても21:30というところが妥当だろう。これについてはグランディ・21連絡協議会側が申し入れを行っている。
5.新たな輸送計画(案)
以上のことから輸送計画を策定するポイントは次の通りである。
@ おおよそ40,000人以上で宮城スタジアムに初めて来る人が多い場合とそれ以外を分けて考える必要があること
A 40,000以下はこれまでのベガルタ戦と同じ対応でよいこと
B それ以外の場合は新たに輸送計画を策定する必要があること
C 沢乙口は沢乙信号交差点に近いため、多賀城シャトルバスと仙台駅シャトルバスの両方が設定された場合は非常に多くのバスが右折せざるを得ないので交通整理が大変であること
D バス専用口を沢乙口にくわえて泉口も設定することも視野にいれること
より具体的な案は次の通り。
(案1)全く新しい案
・ 泉口は仙台駅、多賀城駅、泉中央駅シャトルバス出口、沢乙口は泉中央駅、多賀城、仙台駅シャトルバスの入場専用口とする
・ シャトルバスバースは第7駐車場内に設置
・ シャトルバスは沢乙口から入って、泉口から出る一方通行ルート
・ 途中第7駐車場内のバースを通る
・ バス乗降場は泉口に近い方から、@泉中央駅シャトルバス、A多賀城駅シャトルバス、B仙台駅シャトルバスとし、それぞれ6,10,12バースを設置
・ バス待機列は第7駐車場内の南側
・ バス停車場はバースの北側に設置
・ 一般車はシャトルバス運行時間帯は正面ゲートのみで対応
・ 利府シャトルバスとタクシー・送迎車は同じ場所
1バース13mとして28バースで、364mであり、第7駐車場なら十分に確保可能だ。
(案2)一部改善案
@ 基本的には以前(右図)と同じ
A バース設置場所を変更し、よりスムーズなバス乗車を確保
B 特に多賀城駅シャトルバスのバースを泉中央駅シャトル側に移動する
C 仙台駅シャトルバスのバースを12確保し、かつ整然とした待機列を形成する
D 泉中央駅シャトル、多賀城駅シャトルと仙台駅シャトルの待機列の完全な分離