宮城スタジアムのピッチ雑感

ベガルタ仙台−アビスパ福岡戦での芝状況について
2004/10/3

芝良好

宮城スタジアムの芝は7月末までは完璧な芝であった。
当時、仙台スタジアムは黄色い部分が結構あったのだが、宮城スタジアムにはそういうことはなく、非常に良い状態が続いていた。
右の写真は5月5日の芝一般開放日のものであるが、極めて良い状態であることがわかる。
この極めて良好な芝の状態は7月に入っても続いた。右は7月3日のとある陸上競技大会のときの写真である。芝を撮影した写真ではないので、メインには写っていないが、芝の状態は普段と変わらない、つまりは非常に良い状態であることがうかがえる。
この非常に良い状態に変化が見えだしたのは、8月1日の真夏の芝一般開放日であった。写真は芝を撮ったものではないだけに判別が不可能かもしれない。

荒れる

8月1日に何を見つけたか。それはかなり微小な黄色への変色であった。当然、グランドキーパーの必死の芝作業が続いた。
そして、記念すべき、宮城スタジアムカップの日を迎える。
右の写真は、8月23日その日のものだ。哀れなるかな、変色して一部が枯れてしまった芝が見える。
私はこのときが最も酷い状態であったと、今振り返っている。

芝が荒れているにはそれなりの理由がある。いくつかの要因が重なったことは確かであるし、はっきり言えることは、実は誰も責められないのだ。
敢えて責めるとすれば、芝を一般開放した人たちであるが、それには私自身の意見や委員としての責務も入っているだけに、非常に悲しい思いがする。

とはいえ、原因を追及し、また今後の対策を考えることこそが、非常に重要と考えられる。そこで、この2ヶ月、いばらの上に座っているかのような感じを受ける中で、考えたことを述べる。

病気

この病気は一体なんなのだろうか。素人ながら、調べたことを書かねばなるまい。
その前に、宮城スタジアムの芝の特徴を書いておく。
宮城スタジアムの芝は、寒冷地芝草の4種混合である。その種子配合比率は、
  • ケンタッキーブルーグラス類 25%
  • トールフェスク類 65%
  • ファインフェスク類 4%
  • ペレニアルライグラス類 6%
となっている。つまり、最大の特徴は冬枯れしない、寒冷地芝であること、かつ西洋芝であること、さらに4種混合であることである。
これは仙台スタジアムとほぼ同じである。
これらの芝は宮城スタジアム内だけではなく、隣接する投てき場で栽培されている。全く同じ比率で栽培されているが、これらは芝管理作業上使用されるものである。
右の写真は投てき場のものであり、8月1日といえども、非常に良い状態である。ま、当たり前と言えば当たり前で、ここに入るのはグランドキーパーだけであるからだ。
この状態は今も同じである。昨日(10月3日)、ベガルタ戦で第7駐車場に車を止めた人なら、サブトラックの反対側の、この投てき場を通ったから覚えているかもしれない。

では、なぜ、病気が蔓延したのか。
直接的な原因は6〜7月に遡らなければならない。
その前に、これが病気であるかどうかだが、それは写真がない(とても撮せない。芝が枯れたのを知ったときには、正直涙が出た。)が、ドーナツ状に枯れていくこと、それが同時多発的に起こること、さらにそれが非常な早さで進行すること、から、明らかだった。

原因

病気の種類だが、絞られてはいるが、特定できていない。考えられるのは次の3種。 最初、ドーナツ部分から枯れたので、フェアリーリング病が主と思われたが、どうもそうでもないようだった。
ともかく、病気であることは確かだが、なぜ、ということになる。
芝の一般開放で来られた人ならご存知と思うが、スタジアムの芝に入るときには病気を未然に防ぐために、薬液に履き物を浸ける。これが徹底していれば防止できたのであろうと思うが、実際にはダメだった。
つまり、直接的な原因は、
  • 競技者の靴についた病原菌による感染
  • 鳥による感染
の2種類が考えられる。
実際、6〜7月には、中学や高校のサッカー大会や、サッカー少年団(小学生)の大会がかなり頻繁に行われていたので、その際に管理の悪いサッカーシューズから感染した可能性も否定できない。
管理の悪いという意味は、きちんとスパイクの手入れをしていないという意味で、ついた泥や芝をきちんと洗い落としていないということ。
なお、決して子供たちを責めているわけではない。原因の特定を率直に述べているだけである。

遠因

直接的な原因は上記のようであるが、なぜ今年だけ、という疑問や、あれだけベガルタなどで酷使している仙台スタジアムでは大丈夫なのに、という疑問が残る。
これについての素人的な考えを述べる。
高温・過乾燥
今年の夏は非常に暑く、寒冷地芝に非常につらい環境であった。つまり、高温で過乾燥の状態が長く続いた。芝がトラックに囲まれているせいもあって、乾燥になりやすいという状況も、マイナス要因として働いた。
上記の病気は寒冷地芝に係りやすいこと、特にサマーパッチは混合芝中のブルーグラスがなりやすい。
いわば、米のササニシキが寒い夏に弱いように、ブルーグラスは高温過乾燥に弱いということである。
芝の一般開放
競技用芝を有効に使うには、上記に記したように管理の良いシューズの使用が大前提である。さらに、短時間に大勢の人間が芝を踏むことは芝にとっては大きなストレスとなることは確かだ。ところがサッカーの試合は、2時間でたかが22人+主審が踏むに過ぎない。
右の写真は5月5日、こどもの日、無料開放である。この日、1000人以上の人が訪れた。たかが、1日2時間に22人踏むに過ぎないサッカーの試合とは決定的に違うのは、全部で4時間とはいえ、延べ1000人の人が芝を踏んだということであろう。
サッカーの試合は同一ピッチで1日3試合が限度と言われている(これは入る人の人数に依存する)から、たった1日の芝開放で、実に約15日(1000/(22×3))分のサッカー試合に該当するストレスを芝に与えていることとなる。
さらにサッカーの試合では試合前後に養生の時間を設定していることを考慮に入れると、芝のストレスは予想以上のものがある。
宮城スタジアムの利用拡大
上述したように、宮城スタジアムはその利活用の拡大を目指して、あらゆる人への積極的な利用を呼び掛けている。右の写真のように、U−6キッズサッカーフェスティバルなど、トップリーグの試合だけでなく、サッカー少年団の試合などにも広く開放している。
そのため、今年のスタジアムの稼働率は非常に高く、200円(高校生以下100円)で利用できる一般開放日(ただし、トラック部分のみ)は非常に少ない状況が続いている。土日はほとんど大会が入っているため、個人利用者はサブトラックや投てき場を利用せざるを得ない状況である。
結局、芝へのストレスは非常に高い状態が長く続いたことも確かだ。さらには、上述しような管理の悪いシューズの着用などもある。
では、誰が犯人か
このような利用拡大を目指したのは、グランディ・21利活用促進協議会であり、私自身も委員をしている。札幌ドームなどのようなスタジアムの黒字を目指すのは、宮城スタジアムでは不可能である、ということから、宮城県民に広く開放するような利活用の促進を目指したのだ。
県民が一人1年200円をグランディ・21に前払いして利用しているということを前提にすれば、いわゆる赤字枠は解消できるというもくろみがあった。
というわけで、今回の芝問題の犯人は、県民への利活用を拡大を目指した、私自身ということも言える。
それだけに、あのような芝でJ2リーグの大事な試合をせざるを得なかった、選手各位には、心よりお詫び申し上げる。
結局、宮城スタジアムは、「見る」施設か、「する」施設かという究極の選択をせざるを得ないが、私は「する」スタジアムを目指すことこそが、ぶっこわさないための必須条件と考えるが、皆さんの意見はいかがか?

今後

10月2日、ベガルタ戦で見えた、荒れた芝は、実は芝の更新作業後の一時的な状況であった。上述したような非常に深刻な病気の拡大を何とか、8月末で食い止めたグランドキーパーによって、9月上旬までに懸命な芝更新作業が繁雑に行われた。
九州グラウンドのHPによると、
「芝生面は長い間使っていると土がかたまり、通気不良となり、芝生の根の発育が非常に衰え、老化が早くなります。そこで、芝生の状態が悪かったり、床土が硬くなっている(芝生を−部剥がして硬さを見て下さい。…目安として山中式土壌硬度計で20mm以下が芝生の適した硬さです。)場合など、改善が必要とされる場合に行って下さい。芝生表面に穴を開けたり(コアリング)、切り込みを入れたり(スライシングやシャッタリング)することにより、土の固結や透水性を改善します。トラクター牽引のアタッチメントタイプなどが容易です。必要な更新作業に合わせて、機械等を選んで下さい。 」
とある。この作業を集中的に行った結果、芝の発育途中であったため、あのように凹凸が大きな状況となったわけである。

今後、宮城スタジアムの芝はどうなるか、であるが、12月に予定されているピッチ拡大工事に合わせて、芝の状態は良くなるものと思われる。
ただ、来年も同様な状況が出現することは否定できないので、スタジアム利用についての突き詰めた議論が必要に思う。