宮城陸上競技場をぶっ壊すな!

2004/11/22
11/28 revised
宮城陸上競技場をぶっ壊す動きについてはこちら
〜県議会議事録などをリスト〜
重複施設 重複施設。それは、宮城陸上競技場とグランディ・21宮城スタジアムのことも指す。自転車競技場のこともあるが、ここでは陸上競技場にのみ焦点を絞る。
重複施設解消という県の考え方は、財政その他の理由も加味されており、十分に理解できるとはいえ、実際にそこを利用して活用している小中学生が多数いることも確かだ。
ここでも弱者排除の原理が働くとしたら非常に残念である。
ただし感情論的な話をしても仕方がないので、もうちょっと論点をしっかりもって議論する必要がある。
そこで論点を3つに絞る。すなわち
  1. 宮城スタジアムが宮城陸上競技場の代わる施設となるのは可能か 〜宮スタ代替〜
  2. 仙台市への移管は可能か 〜市への移管〜
  3. 宮城陸上競技場の今後の継続的な整備をどうするか 〜競技場整備〜
という視点である。
それぞれについて考えてみよう。

宮スタ代替 まず、「宮城スタジアムが宮城陸上競技場の代わる施設となるのは可能か」である。
平成14年10月1日の知事の記者会見、“陸上競技場ということでは重複しているわけですね、ああいうような競技をするという場では。ですから、基本的に二つは県の持っているものとしては要らないでしょうということですから、いずれはこれは解消していこうということです。”にあるように、重複施設の解消は赤字を抱える宮城県の使命でもあり、宮城陸上競技場が今までと同様にそこに変わりなく、いつまでも存在するということは事実上あり得ないわけである。
しからば、宮城陸上競技場を解体しないといけないのか。
まずは、宮城陸上競技場と宮城スタジアムの最大の違いはなにか、考えよう。

ポイント宮城陸上競技場宮城スタジアム
類似点
1.大きさ400m×8レーン(全天候舗装)
フィールド(天然芝)
面積 36,530 m2
室内雨天練習場 100m×5レーン
400m×9レーン(全天候舗装)
フィールド(天然芝)71.4m×107m(7,640m2)
面積 36,685 m2
室内雨天走路(直線100m×5レーン、天井高6.3m、跳躍練習場2か所)
2.附属設備サブトラック
300m×8レーン(全天候舗装)
走路 9レーン
面積 17,970 m2
サブトラック=第3種公認陸上競技場(兼用競技場)
400m×8レーン(全天候舗装)、芝生:高麗芝
投てき場:
 助走部(全天候舗装)、芝生:高麗芝 74m×140m
 円盤・ハンマー投げ(共用)サークル1か所、やり投げ助走路2レーン、砲丸サークル4か所
相違点
1.交通アクセス榴ヶ岡駅そば。仙台駅から1.5km程度。利府駅からバスで20分弱、あるいは歩いて40分強。
2.観客席収容人員 30,000人
メインスタンド 7,000人
芝スタンド 23,000人
49,000人(東北最大規模)
・夜間照明
・大型映像装置1基
3.種別第3種公認陸上競技場(兼用競技場)
:国内大会開催可能
第1種公認陸上競技場(兼用競技場)
:全ての国際大会開催可能

上記のように、施設などでは圧倒的に宮城スタジアムが勝っているように見えるが、こと、小中学生が使う限り、そんなことはどうでもいい。問題は土日などで練習をするときの、いわゆるeasy accessの問題である。
自転車で気軽に行くことができるかどうかは、気軽に練習できるかどうかに関わる最大の問題点となる。
榴ヶ岡駅至近で、仙台駅からも歩けない距離にある宮城陸上競技場と、仙台から電車で16分の利府駅からさらにバスで20分弱の宮城スタジアムでは、全く勝負にならない。
とても“気軽に”行くことはできない。
大会を開催するのなら、設備面で圧倒的に勝っている宮城スタジアムの他に選択の余地はないが、小中学生、高校生など多くの陸上競技者の練習あるいは記録会などでは、わざわざ行かねばならない、宮城スタジアムでは全く勝負にならない。
では、宮城スタジアムを宮城陸上競技場の代替施設にするための最低条件とは何か。
むろん、交通アクセスの改善しか他にない。
宮城県が声高に重複施設の解消を進めるのであれば、現在の宮城陸上競技場の立地条件をある程度考慮にいれた宮城スタジアムへのアクセス改善を行わないと、現在宮城陸上競技場を使用している人への利用促進にはつながらない。
それどころか何もしないで宮城陸上競技場の閉鎖を行うこととなれば、交通弱者の切り捨てと、子どもの親の送迎の強要など、多くの社会的問題を引き起こすことは間違いない。
その上、利用者の声を無視した形で、重複施設解消の名の下に、宮城陸上競技場ぶっつぶしを強行することになれば、必ず将来に遺恨を残すだろう。
それだけは避けなくてはならない。
ならば、宮城スタジアムをぶっ壊せ!?
いや、交通アクセス、それも岩切からのアクセス改善を目指さないと駄目だ。
市への移管 次に「仙台市への移管は可能か」である。
仙台市の市営の陸上競技場がなぜないかどうかは、この際問題ではない。歴史ではなく、将来、未来が大切なのだ。
その辺の事情(市営スポーツ施設の問題)を突き詰めたとしても、実際の宮城陸上競技場利用者にとっては意味がない。
目前にある宮城陸上競技場をどうするかが最大の問題なのであって、昔の事情はともかく、今の時点で、“仙台市で最も使いやすい陸上競技場が宮城陸上競技場なのである”ことは論を待たない。
宮城県が重複施設の解消を目的に、宮城陸上競技場を潰す、あるいは予算を大幅に削る、となれば、これを避ける方法は1つしかない。
すなわち、“宮城県以外の組織が予算も含めて自主運営する”以外に方法はない。
宮城県以外となるとどこか。当然、仙台市か民間団体となる。
民間団体で、宮城陸上競技場の受け皿になりそうなところはないし、厳に問題になっている陸上競技者利用のことを念頭におくと、民間団体は適当ではない。なぜなら、民間で有れば利潤追求が最大のポイントとなるし、そうなれば利益があがらない小中学校の陸上競技記録会などはあっさりと切られるであろう。
結局、仙台市以外に運営を含めた移管先はない。
宮城県議会議事録=平成14年9月定例会(第293回)-09月24日を見ると、大学氏の質問事項中に“仙台市議会では、鈴木勇治議員の質問に対し「この施設は宮城県の所管となっており、県の主体的な意向がまず第一に確認される必要があります。仮に本市への移管について意向の打診がありましたら、その必然性や受け入れ条件、課題などについて誠意を持って検討をし、適切に判断いたしたいと考えております」と答弁しておられます。”とある。
つまり、仙台市のスタンスは宮城県から相談されたら考えよう、なのである。
一方、宮城県はどうか。
浅野知事の記者会見=平成14年10月1日(火)で、知事は、“同じような御質問があって、後段のものについては仙台市から移管してくださいという話はございません。今日に至るまでございませんので、これはちょっと我々としてそれにアクションをとるという状況にはないというのが公式的なあれで、前にお答えしたとおりです。”と述べていて、まるで他人事である。
仙台市からアクションをとらないと駄目という感じ。
両者が、向こうからアクションが来ないと何もやらん!と言っていては何も始まらないはずだ。
ところが、宮城県議会議事録=平成16年6月定例会(第301回)-06月22日において、浅野知事は“これはまず宮城県と仙台市が一緒になって、胸襟を開いて、非常に難しい問題ではありますけれども、お互いに考えを明らかにし、整理をしつつ進めていかなければ解決できないというふうに思っております。”となって、若干ではあるが、態度が変わってきた感じである。
まあ変わったとは言っても、なんだかはぐらされている感は否めない。
ただ、仙台市への移管も含めて宮城陸上競技場の今後についての話し合いは始まったようである。

さて楽天による新球団設置と、アイリスオーヤマ社長によるドーム球場構想のおかげで、宮城陸上競技場は、宮城球場に次ぐ注目を浴びていると言って良い。
その中でようやく仙台市と宮城県の担当者による話し合いが始まったと聞く。
私の懸念は全てが闇の中で決まっていくのではないか、という危惧である。
これまで、「そっちから」「いや、おまえの方から」と、とんでもない、なすり合いをしてきた両者が、真に建設的な議論をしているのかどうか、甚だ疑問である。
議論やプロセスの透明化が求められている。
単に話し合いをすればいいんだ、という低次元の問題ではないのだ。
競技場整備 最後の問題。それは「宮城陸上競技場の今後の継続的な整備をどうするか」である。

多くのマスコミ等の論調は上記のように「宮城陸上競技場は仙台市に移管すべき」というものであり、私の意見と同じであるが、結局移管しても、その後のことをきちんと考えないと、競技場は廃れてしまうだろう。
ここでは、“その後”について考えたい。

問題を最初に立ち返ろう。
なぜ、宮城県は重複施設の解消を目指しているのだろうか。2つの施設は要らないとかそういうことは、地域性、人口などで決めるべきだが、そういう客観的な事実に伴う議論は起こっていない。
これは、県の考え方が、予算や運営費といった、お金に絡むことに立脚しているからであり、そうでなければ、もうちょっと「仙台地域は揃っているか? いや人口を考えると2つあっても大丈夫」というような意見が全面的に出ていいはずなのだ。
結局、仙台市に移管するにしても、残すにしても、問題は、実際の運営面ということになるし、継続的な施設整備や保守の考え方をきちんと整理しておかないといけない。

以下、作成中