本当に宮城スタジアムは壊さなくてもよくなったのか?
ワールドカップ後1年の検証
2003/6/15 revised 採点追加
 ワールドカップから1年が過ぎようとしている。この間、宮城スタジアムをとりまく情勢も大きく変化した。本ページが発信している不要なスタジアムはぶっこわせ、という理念は、今も変わらない。
 ぶっこわさないための最低条件はすでに示している。最低条件を果たしてクリアしたのかどうか検証するとともに、今後の在り方を考えてみよう。
市民利用
(最低条件その1の1)
5/5宮城スタジアムピッチ開放。2000人が訪れ大盛況だった市民の利用は拡大したか、の答えには素直にイエスと答えたい。陸上競技場である宮城スタジアムは毎日のように中学校高校などの生徒がトラックを使って練習に励んでいる。
ピッチはどうか。いろんなサッカーの大会が行われ、確実に利用は拡大し、今年の土日はかなり埋まってきている。宮城スタジアムの利用は確実に、しかも、着実に伸びているし、その利用も競技スポーツがメインである。すなわち、宮城県総合運動公園たる役目を担ってきていることは確かだ。
加えて、今年から芝開放が行われ、多くの一般市民が、芝の感触を直に味わうことができるようになってきている。グランドキーパーの協力なくしてはできないイベントではあるが、市民が県民が、自分の財産を手に取ることができる、という当たり前のことが、当たり前のように行われている、というのに素直に喜びたい。
が、きづくのはコンクリートうちっぱなしのスタンドの偉容さである。芝開放や陸上競技の練習で、あの巨大なスタンドは意味があるのか、これは後半考えることにしよう。

4/29場外インフォメーションブースbyグランディ・21ボランティアなお、グランディ・21ボランティアの話を抜かしたが、2003年3月9日、設立され、すでに多くの活動を行っている。詳しくは、グランディ・21ボランティアセンターのHPへ。
宣伝
(最低条件その1の2)
大分W杯スタジアム「ビッグアイ」のホームページ利用拡大の宣伝。こちらは極めて他人任せである。ホームページという武器はほとんど役に立っていない。宮城県スポーツ財団グランディ・21それぞれのホームページの酷さは筆舌に尽くしがたい。
ホームページはあればいい、ってものではない。ホームページは生き物であり、作り手の熱意、気迫は字や、絵などを通して伝わってくるものなのだ。
だれが見ても、やる気のないホームページは、すなわちそこにいる人たちがやる気がないのでは、と思われることだろう。
本当は違うはず(本当にやる気がないのなら、財団なんか潰してしまった方がよい)なのに、そういったマイナス面が表に出ているのは、確かである。某マスコミから、SMAPのコンサートがあるので、宮城スタジアムのホームページを紹介してくれ、というので紹介したら、「あんなのは役に立たない」とコケおろされた。私もそう思う。
作っている人を非難しているのではないことをわかって欲しい。ホームページ発信の重要性を上に立つ者が全くわかっていないばかりか、足を引っ張っているのではないか、と疑うばかりである。
まあ、この間の地震で、大災害になる可能性が大だったのにもかかわらず、宮城県のホームページは普段と変わらず呑気なものだったので、宮城県職員の危機意識はその程度のものなのであろう。
何が、IT推進県だ。ホームページは最も金がかからない情報発信手段であるのに、まるでそういうコスト意識も、重要視する意識もない。
ITなどというスローガンは早々に止めた方がよい。県民は次の大地震のときには、宮城県のホームページなど当てにしはしないだろう。
なお、仙台市がよかったか、というと、こちらも酷いものだったが、まだ、1〜2時間おきに被害状況を更新したのに救いはある。
さて、グランディ・21のホームページを何とかしろ、と以前から言っているのに、アレだ。税金で運営されているサイトがあの状況は、正に、税金をどぶに落としているようなものである。職員はもっと真剣にhtmlを覚えるべきだし、仮にそんな余裕がないとしたら、ボランティアに任せればよい。作成はボランティアに任せ、職員は内容に責任を持つ。事前チェックの上、ホームページに出せばいいのだ。

その他の宣伝。ほとんどが記者クラブの投げ込み状態。いつまでも宮城スタジアムネタで持つわけはない。
ならば、自分の力で何とかしなければならない。マスコミを使うと金がかかる。どうしたらいいのだろうか。
本当に考えているのか? 利府駅でグランディ・21のチラシを見たことがないが、これはなぜだ?
仙台駅の観光案内所に「宮城スタジアムはどこですか?」と聞いてみるとよい。人によっては面白い答えが返ってくる。地道な宣伝がほとんどなされていない、呑気さには、あきれるばかりだ。
すなわち、危機感がまるでないのだ。
利用拡大
の努力
(最低条件その1の3)
営業努力。グランディ・21の職員が営業努力をしているか、と尋ねれば、たぶんNOだ。彼らは施設の管理、指導を当たる職員であり、従い、学校の先生やスポーツ関係の人、教育委員会系事務の人なのである。
彼らに営業努力をしろ、と言っても、どだい無理な話で、餅は餅屋に頼むべきである。営業努力ができる県職員が張り付かないと、恐らくダメ。
前の所長に「訪れる人が自宅を出て、自宅に帰るまで、喜んで貰えるような施設にしたいですね」と話しかけたら、不思議そうな顔で「うちは貸すだけで、借りた方の問題」と、当然のごとく話していた。
この受け答えが当然と思う者は、直ちにグランディ・21を止めた方がよい。グランディ・21を少しでも利用しやすいものにしたい、という努力が職員によってなされてはいるが、悲しいかな、しょせん武士の商法になってしまっている。
この際、イベント系の民間業者から臨時職員を一人でも雇って、宮城スタジアムの受付に座らせたら、きっと空気も変わってくるに違いない。
実は私も営業は知らないが、たとえば、SS30地下のプールの担当者にグランディ・21のプールを1日任せても違うのではないか、と思う。たぶん、民間の活力。転んでもタダではおきない精神を目の当たりにするであろう。
コンサート
(最低条件その2の1)
最低条件の順とは異なるが、まずはコンサートをとらえる。
昨年も今年もSMAPコンサートがある。芝のことが心配であろうが、経営の多角化以上に、多くの人に来て貰う、ということこそが、最も重要だ。彼らはもう二度と来ないかも知れないが、どんな施設だったか、どんなところだったか、必ず人に話すだろう。そういう異分野の交流というか、異分野の人々が集まるのも非常に重要なことである。
問題は、いかに上手に運営するか、に関わってくる。残念ながら昨年のSMAPの運営は中はOKだろうが、外はさんざんであった。交通アクセスの弱さを露呈し、日が変わってから仙台駅に到着する人すら出た。この上なく酷い外の運営であった。
こうなると、全くの逆効果である。
別項でも述べるが今年はひと味違うはずだ。新たな案内・輸送計画が策定されたので、昨年のようにはならないはずだ。
私としては、もっとたくさんコンサートが来て欲しいと思っている。子供も大人も楽しめるコンサートなら、なおよい。そうしてグランディ・21、宮城スタジアムを楽しんで貰えれば、これほど良いことはない。
ともかく、コンサート誘致は評価できる。では、コンサート以外はどうなのか。スポーツイベントでもサッカー以外で呼べるものは野球だが、それは宮城スタジアムではできない。ラグビーか?
向井ジャパン。来ないか?
メッカ
(最低条件その2の2)
第1回障害者スポーツ大会開会式 at 宮城スタジアム(2001年10月27日)メッカになっているかどうか。これは全然ダメな状況であることが明白である。まだ方向性すら決まっていない。何でもかんでもの、状態だ。確かに利用状況は格段に改善されている。が、それでいいのか?
特徴付けは全くなされていない。地元だけが喜んでいる状況だ。これでは今は確かにいいかもしれないが、今後改修とかいろんなことが絡んできたときに、生き残れるとは思えない。宮城球場を見れば明白である。
メッカであることは、永遠性を保証するのだ。
メッカになってこその、あの49,000のスタンドと思わないとダメだ。メッカでもないのに、あの巨大なスタンドは意味がない。Jリーグ3試合+SMAP分の価値は、あのスタンドにはない。
スタンド維持のために巨大イベント4つでは余りにも情けない。
障害者
(最低条件その2の3)
障害者にとって優しい施設か?
これは実はNOである。たすけっとの連中(電動車椅子を使っている)と精査したときに、つまらんところに、ギャップがあって、使えない、ということがわかりかけた。
車椅子を自分で操作すればわかることだが、どっか一箇所だけでも、ほんの3cm程度のギャップがあっただけで、お手上げなのである。また、目の不自由な人にとっては、どっか一箇所だけでも黄色いブロックが1mとぎれるだけでお手上げなのだ。
第一駐車場から歩行者道路にあがれない。大斜路の斜度がきつくて自分では上れない。など、ぼろぼろである。
4/29,5/24のベガルタ戦のとき、車椅子は大人気であった。利用した人は決して車椅子席の人ではない。つまり、健常者なのだが、斜路がきつくて、また、遠くて、車椅子を使ったのである。
優しい施設というのは、そう簡単ではない。常に精査し、どこが問題か調べ、直すところは直す。
職員はそういう意識をもって、障害者に真に優しい施設を目指すべきである。
従ってこの項は落第である。
障害者
スポーツ
(最低条件その2の5)
障害者スポーツが宮城スタジアムで行われた、という話は聞いていない。県内のあちこちで行われているが、宮城スタジアムでは行われていないようだ。メッカでは全然ない。寄りつきもされない施設なのか?
障害者スポーツをするときには、補助する人や競技運営など、多くのボランティアの力が必要である。施設側がそれらをどう補間するのか、あるいはどう捉えているのか全く不明であるが、障害者スポーツを排除しているとは言わないまでも、welcomeではないのは確かだ。
グランディ・21ボランティアにそれら障害者スポーツの補助をすればいいということでもない。グランディ・21ボランティアはまだ人員に限りがあり、なかなか対応できない。
むしろ、施設側がどう考えているのかが、問題だ。障害者スポーツ大会を実施したいという熱意と実行力があれば、障害者スポーツを支えるボランティアはどこにだって行くだろう。それがないのだから、当分宮城スタジアムで障害者スポーツ大会が開かれることはなかろう。
財団や施設が「障害者スポーツは面倒」と思っているのなら、止めて貰って結構。だが、その考えの根底にあるものをよく考えて貰いたい。名前だけのみやぎ広域スポーツセンターを立ち上げ、最初は多くの情報が掲載されたが、その後、徐々に細々といっている。
いつものパターンである。本当はやる気がないのに、やる気があるように見せかけているに過ぎないのではないか。
障害者スポーツにとっての、真の障害は「障害者スポーツは面倒」という意識だけなのだ。やる方向に動き出せば、みんなが協力する。それだけは確かだ。
今後老人は増えて、多くの老人がスポーツを楽しむ場所とソフトウェアが必要になるであろう。誤解を招くかもしれないが、老人になれば誰だって障害者になる。障害者と健常者は区別は元々ない。境界線は非常にグレーである。生涯スポーツを考えるとき、障害者スポーツを寄せ付けない施設は、これからの時代に全く合致していないと言える。
結局、考え方というか、根底にあるものを変える必要がある。
岩切
(最低条件その3の1)
整備された岩切駅前岩切の駅前はずいぶんすっきりした。ロータリーではバスが悠々と旋回できる。岩切駅から出ると、県道泉塩釜線(塩釜街道)と交差して、片側2車線の道が利府街道に延びる。将来的にはグランディ・21宮城スタジアムに真っ直ぐ伸びる道路ができ、それに直結する。
少なくとも駅へのアクセスは格段によくなった。岩切駅前ロータリーも工夫次第で十分にシャトルバスが横付けできる状態となっている。
問題は駅自身にある。駅の改札口は自動改札化に伴い、従来よりもホームにつながる地下道に近くなり、改札口自身は広くなった。ところが、あの狭い地下道はそのままだ。岩切はあの地下道が改善されない限り、1時間1万人の人をさばくことはできない。
が、アクセス道路の整備が進む中で、岩切を使わない手はない。新潟からビッグスワンに行くことを重ねてみると、岩切から宮城スタジアムに行くのは変わらない感じがする。2車線のうち、1車線をバス専用ゾーンを設定することは十分に可能だ。総合運動公園岩切停車場線から岩切駅への直線ルートができあがれば、ビッグイベント開催時にバス専用ゾーンを設けるのに何の問題もない。
キリンカップ時にあった岩切駅構内の人間の渋滞を検証すると、やはり狭い地下道にあったが、それは改札口での規制と、予め計算され計画されたバスによる乗客輸送を実現できれば、岩切は十分にアクセス駅としての資質を備えている。
ではなぜ今使わないのか。シャトルバス利用者がそれほど増えていないという状況が、岩切からシャトルバス発着を遠ざけている。卵と鶏論争に似ているが、シャトルバスが不便で高価なのでみんな使わなくなってきているのだが、圧倒的なシャトルバス優位性を保つことができれば、利府、泉中央、仙台に続く、シャトルバス基地として十分に機能するはずだ。
利府は総合運動公園利府停車場線、泉中央は吉岡塩釜線石積トンネル、仙台は仙台北部道路と、3方向別々のルートをとることで有効なシャトルバス運行がなされている。最も幹線としては広くしっかりしている総合運動公園岩切停車場線が一般車だけの通過ルートとしてだけではもったいない。4方向に独立なルートで乗客の大量輸送を可能にすることは5万人規模のイベントでは極めて有効となろう。
現時点で岩切の利用は凍結されたままである。
一歩進めて、岩切を使うことは考えられないであろうか。
LRT
(最低条件その3の2)
欧州の街角で普通によく見るLRTライトレールトランジット=LRTを総合運動公園岩切停車場線に敷設することはバスに代わる公共交通の実現という意味で意義は大きい。問題は利用者数だ。イベント時はいいが平時にどう利用者を増やすかが最大の問題であり、これが解決されない限り、LRT等公共交通機関の新設は夢と消える。
宮城スタジアムでのビッグイベントはほとんどが土日か祝日に行われる。総合体育館のコンサートもその傾向があるが、平日開催もある。でも平日の場合は大抵、17時過ぎの開催である。とすれば、平時においてグランディ・21駐車場は比較的空いていると考えてよい。
LRT等の敷設と同時に、パークアンドライドをすすめていき、平時の利用者増加を増やす試みはどうか。
つまり、LRTを岩切−総合運動公園第一駐車場の4.5km間に敷設する。同時に第一駐車場の一般者利用を拡大し、通勤通学客の駐車スペースを低料金で提供する。利府駅前の民間月極では1月4000円だから、駐車場利用券として1月2000円程度を設定すればどうだろうか。恐らく200〜300台のスペースで十分だろう。ビッグイベント開催時は駐車を遠慮して貰うことを条件に貸し出すのだ。
バス輸送体制も変化するだろう。現行では青葉台−菅谷台路線があるのみだが、しらかし台線、青山−花園線等を路線変更してもらうとよい。JRにとっては脅威の存在となるが、互いに競い合うことも必要だ。第一、岩切からはJR利用になるのだ。
利府高校やしらかし台工業団地の通勤、通学客にも便利となろう。利府高校生は歩いても1km15分だ。ジャスコなどの大規模商業ゾーンと若干離れているが、そこはジャスコバスか。本当は岩切→ジャスコ→グランディ・21のルートが採算を考えると圧倒的に有利なのだが、恐らく土地やスペースがなく敷設不可能だし、大混雑の利府街道に敷設するのは現実的ではない。
もちろんLRT建設のためには環境アセスメントや需要状況などの調査が不可欠であるが、可能性はなくはないはずである。また、10億円程度の建設費と車両費を宮城県がひねり出せるかどうかがポイントではある。宮城スタジアム4年分の維持費をかける価値があるかどうか、ここは議論のしどころだ。
極論ではあるが、利用者がLRT敷設を負担するという考え方もある。運賃ではなく、事前に出資するのだ。町内会単位でもいいし、各個人が負担してもいい。宮城県、利府町の負担に住民自らが負担するというものである。実際、請願駅の建設ではこの種の話が浮上する。今はなくなったが東北線北塩釜建設構想には付近の住民の負担を前提に考えられた。住民にとって身近な公共交通機関であるという意味でも考慮してもいいのではないかと思う。もちろん、そうなれば私は出資する。
アクセス改善
(最低条件その3の3)
グランディ・21利用促進協議会のワーキンググループというのがある。これにはイベント業者、ベガルタ仙台、JR、宮城交通、行政、住民とボランティアが入っている。3月から3回ほど、この種の会議としては異例とも思われるほど、長い時間(4時間かかったこともある)会議をおこなってきた。またこの会議は小回りも結構きいた。4/29の反省点(第一駐車場のタクシー送迎車と歩行者の不完全分離の解消、泉口双方向出場の実現、シャトルバス乗車並び口整理の改善など)が全て5/24のベガルタ戦に反映された。
その結果、ベガルタ戦(4/29,5/24)の交通アクセスは圧倒的に改善された。詳しくはボランティアセンターの中のアクセス情報を見るとよいが、上述したシャトルバスの3方向別路線化、仙台駅シャトルの定時運行化などを実現し、ほとんどの観客が30分以内で乗車でき、仙台駅へは30分程度で結ばれた。最後のバスは試合終了後1時間ほどで終了し、昨年のジュビロ戦の2時間を大きく下回った。駐車場から出場する乗用車も昨年の2時間半から、5/24には1時間半程度まで短縮された。まだまだ多くの問題はあるものの、ほとんど観客から文句が出た昨年のジュビロ戦とは大きく変わり、ほとんどの観客は不満なく帰っていってくれたものと思われる。
こうしたソフトウェアの充実ぶりとは裏腹に、施設の中の人に優しい備品等の充実さは根本的に遅れている。金がかかる問題で仕方がないのだろうが、何とかその分をひねり出して欲しい。
というわけで、アクセス改善は大きく前進し、陸の孤島とまで言われ、あるいはワールドカップ開催会場で最も不便な会場とまで言われた宮城スタジアムも、ようやく他の会場なみになってきているのは確かだ。この項は及第点が得られるものと思う。

さあ、次は採点だ。

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