「2002年への想像力」
座談会
宇都宮徹壱、広瀬一郎、鈴木武和((株)東北ハンドレッド育成部育成部長)

司会
(宇都宮)
来年2002年について。広瀬さんは我々がワールドカップを呼んだわけではない。根底のところが忘れられている、と言ったが。
広瀬 チケット問題に見いださざるをえない。
提案書を扱っていた。日本でW杯をやると世界の人たちにいいことあるよ、と書いた。
ところが、チケットをどうやってとるかという自分たちの質問ばかり。世界の人にいいことあるよ、とは反対。
21世紀のワールドカップは商業化してしまって、国家で盛り上がる感じ。国家と都市がどう選別されるのかという中で行われる。
司会 宮城が開催都市に決まったときどう思ったか。
鈴木 W杯とはすごいものがくると思った。
宮城で開催されるというのは信じられないと思った。でも、本当に宮城県民が決議したのか、というのが心配。
それだけ多くの外国人が来たことがない。
司会 キリンカップのときはどうか。アクセスの問題とか。
広瀬 今朝ようやく行ってきた。印象としては、
1.仙台をでて、雪深いところを通り、本当にW杯がやってくるのか
2.設計図を見ていたので、できあがった建築物を見て感慨が深かった
3.スタジアムが美しい
スタジアムが美しいことは必要。
バルセロナのスタジアム。通路に祭壇があった。どうしてか、と聞いた。
祈るためだ、戦いの前に祈るのだ。
日本のスタジアムにはないのか。
スタジアムは戦いの場、語らいの場、念じる場でもある。
デザインにこだわるのは成果と思う。
司会 キリンカップ、一観客としてどうか。
鈴木 駐車票を持っていたので、スタジアムそばにつけた。
道が混んでいたので、裏道で行った。
駅からスタジアムまで遠い。だから、途中にビールが飲めるところでもあるといいな、と思う。
スタジアムはきれいだ。
司会 キリンカップのときは日本に居なかった。ユーロで8会場をまわってきた。
宮城スタジアムは、建築物はいい。
でもアクセスはどうするのか。利府と岩切しかない。多量のサポーターをさばくのにどうするのか。
歩くのはどうする? スタジアム周辺にはコンビニ1軒しかない。
途中にエネルギー補給基地が必要だ。飲まず、食わずで歩かせるのか。
トイレに行きたい。でもお店がない。
がまんできない。周辺は住宅街。臨時のトイレを置く必要がある。
仙台駅からリムジン。往復2000円かかったという。
バルセロナでは、バスにのっても、お金を払わなかった。
貧しい国からきたサポーターに2000円よこせはひどい。
駅からスタジアムは無料にすべき。
広瀬 2000円は暴利だ。
鈴木 その辺は県の人ががんばって欲しい。
チケット見せてタダは良い。そういうお金の件で、頭を悩ませたくない。
お金、アクセスに悩まずにスタジアムに行きたい。
広瀬 フーリガン日記に、公共輸送機関はタダと書いてある。徴収しようとするとバスは大幅に遅れることになろう。
司会 海外から来たサポーターからの視線でみると、両替はどこだ、ということになる。
みんな小出しで両替するのだ。ヨーロッパには駅の近くに必ず両替がある。仙台ではどこだ。
広瀬 Masterカードが考えているだろう。
道にうるさいくらいに看板をだすのでは。
鈴木 今までの島国の日本に多量のサポーターが入ってくる。どういうふうに受け入れて、どういうふうに帰してあげるかが重要。
司会 日本人は自分たちでは変わらない。
外圧で変わる。
W杯は、黒船、進駐軍に続く、3番目のショックではなかろうか。
W杯でどう変わるのか。
広瀬 グローバルスタンダードというが、日本では米国のルールにのっとっている。
米国が我々から見て外国というのは、外国観の55年体制だ。
W杯は脱55年体制ではないか。
ロジックの違う人たちが来る。違和感はあるが、嫌悪感はないだろう。
ルールは変えていいんだ、ということがおこる。
それがどこか居心地がいい。
いい加減さに同調する。
鈴木 いろんな人たちと日本人がコミュニケーションをとれるか?
言葉の違い人々と日本人がつきあえるか。
全くコミュニケーションはとれないかもしれない。
司会 私の友人がイランに行った。ペルシャ語はできない。ただ、イラン人選手の名前(クエイ、バギギなど)を唱えた。
それで通じ合った。
英語が通じないところでは、ありがとうの言葉と、その国の有名選手を覚えておく。
それがコミュニケーションになる。
サッカーが重要なコミュニケーションツールとなる。
広瀬 メキシコに行ったとき、土日は公園でサッカーをして、少年達と混ざった。
それだけで晩飯にはありつけた。
普通は観光客と接するときは、よそ行きの顔をしている。
メキシコ人が日常で接してくれた。
日本で、日常と日常のコミュニケーションができるかどうかが、心配。
人格を出すというコミュニケーションができるか。
裃(かみしも)を脱ごう。 30カ国。それぞれ一人くらいの選手の名前は覚えよう。
鈴木 サッカーをやっていて恩恵をうけた。自分の金で海外に行ったことはない。
S級をとったとき、ローマに行った。
サッカーの勉強に来たというと、イタリア人の顔つきが変わった。
ナショナルチームの主力選手の名前を一人知っておいたらどうか。
司会 2002年以降、いや、2002/6/18で、お祭りは終わってしまうのか。
当事者として居られなくなるのか。
鈴木 宮城では6/18で終わるが、ワールドカップは続く。そこでとぎれるかどうか。どうやって続けるか。
広瀬 メキシコのとき、プエブラは打ち上げをやった。撤収をした。
イタリアのときもそう。
司会 札幌は1週間で終わってしまう。
3〜4試合しかできないから、そうなる。
大会が終わったようになってしまう。
広瀬 2つの可能性がある。
1.打ち上げを宮城スタジアムで決勝戦に合わせてやる。
2.日本代表がどこまで勝ち進むのかによる
司会 宮城スタジアムのスクリーンに、是非ファイナルを上映して欲しい。無料で招いて欲しい。
実現したら、すごい
鈴木 想像するだけで楽しい。
日本が勝っていたら、その試合の模様を宮城スタジアムで放映する。
広瀬 東北在住のドイツ人は無料で招待する。
打ち上げに呼ぶ。次の開催地だから。
司会 勝手連がやるべきことはないか。
ボランティアでがんばる人もいる。
W杯を通して、ハード、ソフトの財産をどうするか。どう生かすか。
広瀬 問題になっていることはなにか。公共性という概念を作らないといけない。
同士だけでは、経済もコミュニティもつながらない。
勝手連。みんなで考え、みんなでやる、ということが、コミュニティの維持につながる。
環境問題がやってくる。
安全と環境と教育にコストをかけよう。
共通項として深く語るための予行演習だと思う。
鈴木 サッカーを指導している立場として、こういう人たちを一人でも多くつくりたい。
お金にならないことに情熱を燃やす人たちをつくりたい。
ベガルタ仙台を作ってつくりたい。
スタジアムに行って、スポーツを楽しめる人を人でも多くつくれたらいいな、と思う。
鈴木 スタジアムをどう使っていくかは、大きなテーマだ。
広瀬 あのスタジアムは大事。
あのスタジアムを宮城県人が、使いこなせたら、これはすごいことだと、そう思う。
サポーター達は幸せだ。
司会 質問の受付。
2002/6/9、あなたは何をしているか。
(会場に質問)
広瀬 (質問に答えて)
10のカテゴリーについては、宮城県庁に聞いてください。

(国際交流について)
広島のアジア大会では、町ごとに応援する国を決めた。それが後につながっている。
宮城スタジアムに足形を残そう。
勝手連の人は伝説を残そう。
最初に得点した選手の名前を残そう。
宮城だけに、国際利き酒大会もいいのでは。
司会 千代紙を持っていって折り紙をする。
二次元から立体的なものができるのに、みんな驚く。
仲良くなった人に、漢字で名前を書いてあげる。喜ぶ。
広瀬 アジアの国からボランティアを引き受ける。
ホームステイに来た人にアジアにPRしてもらう。
鈴木 仙台はキャンプ地に立候補して、インフラが整備されている。
施設を気軽に使えるようにしていきたい。
司会 来年の6月には何をしているか。
鈴木 ゲーム以外で生の経験をしたい。
試合以外のお祭りを体験したい。
広瀬 インターネットメディアとして、ビジネスとして当事者となる。観客になることはできないだろう。
司会 全く想像つかない。
IDパスはもらいないだろう。サポーターの写真を撮ってはいないはず。
スタジアムで見るつもりはない。
大衆と歓喜したい。関わっているけど、どこにいるか、わからないだろう。


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宇都宮徹壱 (写真家、ノンフィクション・ライター)
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執筆責任者:村松淳司